日本選手権東京予選デッキ解説
とどちゃま田中
4月に入りこれから日本各地で選手権予選が開催される。
その一回目にして最大であろう予選が週末に東京・池袋で行われた。
ここではその900人弱を勝ち抜いた20のデッキを見て、簡単に解説していこう。
デッキレシピはサイドボードなどにあるので、参考にしてこの記事をみてもらいたい。
●デッキタイプ:ステロイド
突破20人中6人がステロイド系のデッキを使用している。
ステロイドと共にメタゲームの中心とされるサイカトグデッキに優位に戦える点は非常に心強く、
デッキの内容が比較的均一で偏った引きをしない点も好まれる理由であろう。
第1位 Shinya Wachi
このデッキの特徴は、
・ラノワールのエルフ、極楽鳥の不在
・隕石の嵐、渋面の溶岩使いの採用
この2点は火力の増加という目的をもっておこなわれた調整である。
火力を増加する事により、同系ステロイドのクリーチャーを全滅させ、簡単に息切れさせてしまうことが可能である。
その後は激発などで得たアドバンテージで生き残ったクリーチャーや隕石の嵐でとどめをさすという形に持ち込む。
サイカトグデッキなどには、序盤に10点ほどライフを削ってしまえば、残りの火力を本体にうちこむだけとなる。
隕石の嵐が通れば、それだけでゲームが終わることもあるはずだ。
またステロイドというデッキの特質上、どのデッキにもビートダウンだけで押し切ってしまう事も考えられる。
簡単に書いてしまったが、以上のように最近のメタゲームの上で重要なデッキどれにでも優位にたつ事が可能なこのデッキが一位となったのは、
ある意味当然の結果だったのかもしれない。
第5位 Kentaro Noda
タッチ黒のステロイド
メインでチェイナーの布告、サイドボードでは同系対策の殺戮が採用されている。
このデッキは、最大マナコストがカヴーのタイタンの5マナ、それも2枚しか入っていないという、超速攻型のステロイドである。
スキジックすら使用せず低マナ域にこだわることで、安定して序盤のビートダウンを可能にしている。
サイカトグなどのコントロールに対して強力なデッキに仕上がっている。
第7位 Taku Toyama
こちらもタッチ黒だが、メインは終止。サイドボードは強迫、魂売り、雷景学院の戦闘魔導師と黒いカードがふんだんに使用されている。
メインの内容を見てみると、呪文散らしのケンタウロスが4枚搭載。これはサイカトグや青緑マッドネス、8マンなどにとってはたまったものではない。
だが、怒り狂うカヴーやスキジック、無謀な突撃など速攻をもったカードが全く使用されていない点は、
コントロールデッキに対してのプレッシャー不足を懸念させられる。
第8位 Kimihiko Sato
こちらは純粋二色のステロイド。
日を浴びるルートワラが採用されているが、マナを綺麗に使用していくこのデッキでパンプアップするタイミングが存在するのか考えてしまう。
火力が多いデッキならば、序盤数ターンだけでライフを減らすために使用するのはわかるのだが、このデッキではどうだろうか?
サイドボードも疑問点が存在する。まず土地が22枚でワームの咆哮は使用できるのか。そして十二足獣は必用なのだろうか。
私は両方ともNOと考える。
咆哮は雑種犬がいないかぎりシヴのワームのほうが強い。
十二足獣ははね返りや沼ヘドロ、ジェラードの評決対策なのだろうが、はね返りは霊気の噴出や排撃の存在で最近使われていないし、
沼ヘドロを使う黒コントロールデッキや評決をつかう白黒デッキはただでさえクリーチャーデッキに強力である。
そこにクリーチャーの対策カードを入れる意味はないように感じられる。
第13位 Yuichi Takasaki
またまたタッチ黒のステロイド。
メインはチェイナーの布告。サイドボードはさきほどの二つのデッキのサイドをまぜあわせた感じである。
このデッキも5位のデッキと同じように超速攻を主眼においたデッキとなっている。メインから疾風のマングースが搭載されているあたりが特徴的である。
このデッキもルートワラが採用されているが、2マナクリーチャーの量が多い分、さきほどのデッキよりもさらに使い勝手が悪いと思われる。
第14位 Takashi Tawara
最後のステロイドもタッチ黒。
メインでエルフがいない所に、ルートワラや渋面の溶岩使いが採用されている。ルートワラについては今まで書いてきたとおり疑問である。
変わっているのは火力で採用されている溶岩の槌。ウルザの激怒ではマナが重かったのだろうが、やはりウルザの激怒のほうがよいと思う。
●デッキタイプ:サイカトグ
続いてのデッキはこれまたメタの中心に存在するサイカトグである。
20人中4人がサイカトグをメインにしたデッキであったが、細かい点で様々な調整がなされていた。
このデッキ自体は序盤さえしのげれば最強デッキでと言われており、ステロイドとの勝負がこのデッキの問題点と言える。
第3位 Haruhiko Kouno
青黒というよりは、赤まで含めて均等3色なデッキである。
火/氷、終止、チェイナーの布告、排撃と苦手なはずのクリーチャーデッキ対策を大量に投入している。
カウンターが入っていないので、普通の同系に対しては苦しい戦いとなると予想される。
最近はサイカトグデッキに激動が入っていない為、抹消までつなげれば勝つ事は可能であろう。
ところでデッキ名にもなっている、特徴のRadiate。たしかに能力は強いのだが、やはり重いと思うのだがどうだろうか。
第10位 Taktoshi Sekiguchi
多くのカードが2−3枚と、まとまってないという第一印象をうけるデッキである。
僕も比較的こんな中途半端な枚数のデッキを作るので、あまり言えないのだけれども。
バウンスが0でエディクトとディマイズが2枚ずつ。タッチの緑でDeedだけとっているという、珍しい形のサイカトグデッキとなっている。
これでステロイドに勝てるのか疑問ではあるし、色々中途半端な分同系にも不利な戦いとなると予想される。
第18位 Tatsuya Iwakawa
これまたタッチDeedのサイカトグ
こちらは4枚か3枚と綺麗にまとまった感じでDeed以外の部分はオーソドックスだ。SBJなどのレシピでは4枚足りないのだが、これはFactで問題ないだろう。
このデッキも先ほどのデッキもカウンターDeedからの派生かサイカトグからの派生か。
はたまた融合なのか難しいところだ。
ただしEdictが多い世の中で、夜景学院の使い魔や影魔導師の浸透者、マーフォークの物あさりを採用していないのはありえないのではないだろうか。
第20位
最後は二色のサイカトグ。
比較的普通のデッキだが、ポイントは綿密な研究。捨ててからでもドローができる点が非常に優れている。
序盤に押し込まれサイカトグを生かす為に仕方なく捨ててしまうカードというものがこのデッキでは存在するが、
綿密な研究はライフに余裕があればそれをカバーしてくれる。手札にあっても無駄にはならないので非常によいカードだろう。
●デッキタイプ:対立
以前より静態の宝珠とのコンボで活躍していたカードだが、オデッセイ発売以来の使用頻度は非常に高くなった。
青緑という除去のない色におけるパーマネントコントロールとして評価され使われているのである。
第6位 Yoshiharu Ishii
いわゆるスネイクタンと呼ばれるデッキ。
このデッキの特徴は4枚フル搭載されているリスの巣であろう。これだけで相手を圧倒することが目的である。
対立とリスの巣がでてしまったらそれ以上続けるのは無意味である。静態の宝珠がはいっていないのは、
リスの巣があれば宝珠がなくてもほぼ完全ロックが決まるからであろう。
第16位 Ryu Kawamura
オデッセイ発売当初にインビテーショナルでトッププレイヤーが使用した形に近いものである。これもリスの巣が搭載されている。
このデッキは特にサイドボードに注目。
まずはSleepingPotion。
昨年のAPACでモリカツヒロは、マシンヘッドに使用されているBlazingSpecter対策としてNetherGoのサイドボードに入れていたが、
このデッキには対立というほぼ万能となる除去がある。どのような相手にサイドインするのか理解に苦しむ。
そして凡人の錯覚。
これまた何対策なんだかわからないカードである。ステロイドに対してライフゲインは強力だが、
対立が入っているだけにエンチャント対策がサイドから投入される事を考えると、意味がないように感じる。
対立を守る弾よけなんてことはないだろうから意味があるのだろうが、やはり理解に苦しむカードである。
●デッキタイプ:8マン
第2位 Manabu Kida
昨年末、八王子組の浅原晃が作成しファイナルで使用したこのデッキは、今年の選手権予選をも突破した。
このデッキもサイドボードオンラインを見てもカードが4枚足りない。このままだと赤マナのでる土地が意味ないので、たぶん火/氷だと推測する。
デッキ自体サイカトグに土地の並べあいで勝てずカウンター合戦で負け、ステロは先行ゲーとなるので個人的には選択したくない。
そこをFireだけでカバーできるとも思えない。だが予選を突破しているところを見ると、私の知らない戦い方があるのだろうか。
●デッキタイプ:クリーチャー主体青緑デッキ
第11位 Souichi Katsuta
ターボスレッショルドとは言い難い。かといってマッドネスゴーというにもマッドネスのカードが多いわけでもない。非常に微妙なデッキである。
タッチでの神秘の処罰者は、クリーチャーデッキ相手に膠着状態を打開するいいカードである。
それ以外に注目したいのがGlobalRuin。現在の世の中では、ステロイドですら基本地形がほとんどないのである。
絶大な効果が予想される面白いカード選択である。
第17位 Wataru Ito
青緑のビートダウンデッキ
カウンターもバウンスも入っておらず、クリーチャー以外のスペルは巨大化系オンリー。なんともとんがったデッキである。
面白いデッキコンセプトなのだが、メタゲームの中心とされるデッキとわたりあえるのか疑問である。
予選を突破したところをみると、膠着したところから飛行クリーチャーで削りきる、といったパターンで押し切れるのだろう。
相手プレイヤーが予想していない樫の力が大活躍していると考えられる。
個人的には好みのデッキである。
●デッキタイプ:カウンター主体青緑デッキ
第9位 Shusaku Makino
カウンターエンフォーサーと言ってもいいだろう。
ただEdictが横行している環境でクリーチャーを増加しないといけないのが当然であり、このデッキでもそのようなデッキ構成となっている。
メインに3枚採用されている強制だが、全部マーフォークの物あさりでよかったのではないかと思う。
序盤では使用するタイミングが存在せず、中盤から後半では、ただカードを回す強制でなく郷愁的な夢や再供給、好機などのほうが有用だ。
しかしデッキ自体はよく考えられており、予選を突破したのも納得できる。
第15位 Tomohiko Kezuka
デッキ名はターボマッドネスとなっているが、ルートワラも採用されておらず、堂堂巡りも3枚となっている。
クリーチャーがワームの咆哮を入れて15枚。うち2枚は神秘の蛇であり4枚は物あさりなだけに実質攻撃クリーチャーは9枚しかない。
もうちょっとクリーチャーによせるか、強力なエンドクリーチャーを採用したほうがさらによいデッキに仕上がるはずだ。
●デッキタイプ:黒コントロール
第19位 Isao Ohno
ファイレクシアの闘技場入り黒コントロールデッキ。フランス選手権シャンパーニュ予選優勝デッキとほぼ同じ形である。
メインでクリーチャーレスに仕上げ、多くのデッキのクリーチャー対策カードを無効化している。
クリーチャー対策をサイドアウトした対戦相手にサイドからのナントゥーコの影が襲い掛かるといった形も強力である。
サイドボードに搭載されているレガシーの兵器は、コントロールデッキに対する秘密兵器である。水晶の採石場と合わせてサイドインする事で、
防御円などの苦手パーマネントへの対策となるのである。
ところでミラーリはどのような時にサイドインするのだろうか。
●デッキタイプ:ターボバランス
OD発売直後からファイナル前後まで活躍し最近は見ないと思っていたデッキだが、この予選突破は再上昇の兆しかもしれない。
やはり意外性、地雷としてのデッキレベルは非常に高い。
第14位 Masashi Konno
メインで地震を採用しステロイドに耐性をつけてあるのが特徴的。
このデッキはいかに平等化を引くまでを凌ぐかがポイントであり、地震を採用した分ドロー操作が減り、苦しい部分が多々見受けられる。
●デッキタイプ:アグロブラック?
第12位 Tomofumi Omata
青黒デッキでサイカトグを採用していない一風変わったデッキである。
はじめは世界各地で活躍しているアグロブラック(黒赤)かと思ったがよくみると黒青。激動はあるけどサイカトグはいないと興味をそそる要素が満点。
デッキは赤から青に色を変え火炎舌のカヴーを失ったものの、そこはよろめく大群の増加や嘘か真かでのアドバンテージでカバーしている。
さらにはね返りやサイドボードの現実の修正が黒赤ではどうにもならなかった防御円などのパーマネントへの回答となっている。
サイドボードも特徴的。陰謀団の先手ブレイズはコントロールデッキに対して、特にサイカトグにとっては強力なカードである。
黒赤のアグロの場合はメインだったのだが、ステロイドに対しては重いブロッカーでしかないためサイドボードにしたのだろう。また、タッチ白で防御円だけ採用している。
タッチ青白のアグロブラックにした事で、防御円の強さを考えたいいデッキに仕上がっている。
終わりに
本当に簡単に解説しましたが、私が理解していない点、間違っている点などあるかもしれません。そのような指摘は歓迎いたします。また、力ない身で批評をしてしまいましたが、その点もご容赦いただければ幸いです。
これから予選に参加される方、また普通にスタンダードを楽しむ方の参考になれば良いと思っております。
意見感想はodo_boss@hotmail.comまで。